【登録講習機関】国土交通省航空局の厳重注意について

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無人航空機操縦者技能証明の登録講習機関に対して、国土交通省航空局からはじめて厳重注意が出されました。
この記事では厳重注意の内容を知ることで、登録講習機関の運営における注意点を改めて確認したいと思います。

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令和6年10月25日

厳重注意について

目次

入学申請者に提出を求める申請書添付書類の不備及び不保存

厳重注意通知書

無人航空機の登録講習機関及び登録更新講習機関に関する省令(令和4年国土交通省令第59号。以下「省令」という。)第12条第2項においては、登録講習機関は入学申請書及びその添付書類を備え、無人航空機講習を修了した日から3年間保存することが規定されている。当該規定を踏まえ、貴社の無人航空機講習事務規程(以下「事務規程」という。)6-2において入学申請書の添付書類について規定されており、民間技能認証等を有する者であって講習科目の一部の減免を受けようとする者は、該当する民間技能認証等の写し等を提出させることとされている。しかしながら、貴社においては講習科目の一部の減免を受けようとする者の民間技能認証等の写しが備えられておらず、また、保存されていなかった。

国空無機第57901号『厳重注意通知書』

「省令」において入学申請書、添付書類を備え置きすることが求められ、講習を終了した日から3年間保管することが義務付けられています。
登録講習機関が入学申込者に対し、どのような書類を、どのように提出させるのかは「事務規定」に記載します。
※「事務規定」は国土交通省航空局が公開しているサンプルであり、必ずしもこのとおりではありません。
 登録講習機関ごとに内容が異なってる場合がありますが、法令を満たす内容でなければなりません。

無人航空機の登録講習機関及び登録更新講習機関に関する省令

第十二条

(~中略~)
2登録講習機関は、法第百三十二条の八十の帳簿並びに登録講習機関の入学申請書及びその添付書類(当該書類に記載すべき事項を記録した電磁的記録を含む。)を備え、登録講習機関における無人航空機講習を終了した日から三年間これを保存しなければならない。

無人航空機の登録講習機関及び登録更新講習機関に関する省令(令和四年国土交通省令第五十九号)

無人航空機講習事務規程_サンプル

6-2 受講申請
講習を受けようとする者に対し、入学申請書様式(別添〇)に、次に掲げる書類及び写真
を添えて提出させる
ものとする。
(1) 本籍の記載のある住民票の写し(6月以内に作成したものに限る。)     1通
(2) 省令第236 条の38 第8項第一号の規定による無人航空機操縦者身体検査証明
書(身体検査を受けた日から6ヶ月以内のものに限る。)又は同項第二号の規定に
よる身体検査合格証明書、航空身体検査証明書又は国土交通大臣がこれらと同
等以上と認めるもの                             1通
(3) 写真(縦:30 ㎜×横:24 ㎜)の裏面に氏名及び生年月日を記入したもの  1葉
(4) 民間技能認証等を有する者であって、講習科目の一部の減免を受けようとする者
は、該当する民間技能認証等の写し等                     1通

無人航空機講習事務規程_サンプル

”講習科目の一部の免除を受けようとする者”については「事務規定」のサンプルに記載のとおり、免除を行う条件は登録講習機関ごとに定める必要があります。
免除を行う条件を定め、免除した場合には必ず帳簿に記録します。
監査においては免除の条件が明確になっていること、該当する免除対象者がいる場合には免除した記録が残っていることを確認します。

免除について民間技能認証以外にも、無人航空機操縦者技能証明(二等を保持し、一等を申し込む場合など)を有している場合や指定試験機関の学科試験合格者などを条件とされている場合があります。

無人航空機講習事務規程_サンプル

第7章 受講等の免除
7-1 講習科目免除の記録
1 登録講習機関管理者は、講習を受けようとする者が経験者(民間技能認証等を有する
者)である場合には、告示に基づき講習を一部免除するものとする。なお、免除の条件等に
ついては、○○において定める。
(注:免除を行う条件は、各登録講習機関で決めること。)

2 登録講習機関管理者は、前項の規定による講習の受講を免除した場合、その旨を講
習記録簿(帳簿)に記載する。

無人航空機講習事務規程_サンプル

審査員研修を受講したのち審査員研修修了証明書の発行を受ける前の審査員による修了審査の実施

厳重注意通知書

航空法(昭和27年法律第231号。以下「法」という。)第132 条の72及び省令第6条第4号に基づき、無人航空機講習事務の実施に際して、登録講習機関の講師は、登録講習機関の教育の内容の基準等を定める告示(令和4年国土交通省告示第951号。以下「告示」という。)で定める基準に適合する研修を受講することが求められており告示第2条第3項第2号においては、審査員研修修了証明書を保持している者に限り、登録講習機関の修了審査員として選任することとされている。しかしながら、貴社においては審査員研修は受講していたものの、審査員研修修了証明書が発行される前に、当該修了証明書を所有していない者が修了審査員として修了審査を行っていた。

国空無機第57901号『厳重注意通知書』

審査員研修とは指定試験機関が実施する修了審査員研修を指しています。
告示において、修了審査員は講師の中から選任し研修を受けさせること、研修を修了したことを証する書類を保持している者に限り、修了審査員として選任すること。とされており、たとえ修了審査員研修の受講を終えていても修了審査員研修修了証明書が手元に届く前に修了審査員として審査することはできません

登録講習機関の教育の内容の基準等を定める告示

(登録講習機関管理者及び講師に対する研修)
(~中略~)
省令第六条第四号の告示で定める講師のうち、修了審査を行うことができる者(以下「修了審査員」という。)に対する研修の基準は、次の各号に掲げるものとする。一 登録講習機関は、修了審査員の候補者を選任し、当該者に対して、無人航空機操縦者技能証明の区分に応じて、別表第五の基準に適合した研修を受けさせること。二 登録講習機関は、別表第五第六号の研修を修了した者に対して、指定試験機関が発行する研修を修了したことを証する書類(次号において「審査員研修修了証明書」という。)を保持している者に限り、登録講習機関の修了審査員として選任すること。三 研修は三事業年度ごとに受けることとし、審査員研修修了証明書の有効期間は三年とすること。四 登録講習機関は、研修の基準に変更が生じた場合その他の臨時に研修の実施が必要と認める場合においては、修了審査員に対する研修を受けさせること。

登録講習機関の教育の内容の基準等を定める告示

なお、修了審査員補助員について事務規定別添の講師一覧表などで届出する必要はありません。
ただし「事務規定」にあるように、登録講習機関に所属する者であり、飛行原理や修了試験(実技試験)について理解しているものを選任する、とされています。

無人航空機講習事務規程_サンプル

9-4 修了審査の実施等

1 実地修了審査の審査科目及び細目、内容及び採点は、国土交通省及び指定試験機関が定める基準(別添○)のとおり行う。また、修了審査員毎に評価のばらつきが生じないよう措置することとする。

2 修了審査員補助員は登録講習機関に所属する者であり、無人航空機の飛行原理、実地修了審査の具体的内容及び手順並びに減点適用基準を理解しているものを選任する。

無人航空機講習事務規程_サンプル

実地講習における必修履修科目の未実施

厳重注意通知書

法第132条の72及び省令第6条第1号に基づき、無人航空機を飛行させる能力を習得させるための課程に係る必要履修科目の教育時間等の教育の内容及び教育の方法が告示で定める基準に適合するものであること等が求められている。しかしながら、貴社においては、一等に係る実施講習において、告示に規定される履修科目の一部を修了していない者に対して、修了審査を行い、修了証明書が発行されていた。

国空無機第57901号『厳重注意通知書』

登録講習機関において実施する学科講習、実地講習について、それぞれ告示別表第一、別表第二において
必要履修科目および必要時間数が定められています。
学科講習においては総時間の必要時間数だけではなく、科目ごとの必要時間数も定められています。
実地講習については登録講習機関において必要履修科目ごとの講習時間数を定め、事務規定別添の講習科目及び講習時間や時間割として届出します。
講習時間数や時間割として国土交通省航空局に届出するのですが、告示に定める必要履修科目が不足していたり、必要時間数を下回っていても受理される場合があります。(※)
受理されたとしても告示に定める必要時間数に満たない講習では、修了審査を受検させることはできませんので十分に注意してください。

※監査では届出している講習科目や講習時間数、時間割について、初学者や経験者、一等と二等の別、限定変更の内容ごとに告示に定める講習科目や時間数を満たしているか確認します。
 監査において、たとえば目視外限定変更の時間割で「六 基本操縦(自動)」が抜けていたり、必要時間数に満たない時間割が届出されていることが発覚する場合があります

登録講習機関の教育の内容の基準等を定める告示

本来修了審査に合格していない者に対する修了証明書の発行

厳重注意通知書

法第132条の72及び省令第6条第9号に基づき、修了審査に合格した者に対してのみ修了証明書を発行することが求められており、無人航空機操縦士実地試験実施基準等(以下「実施基準等」という。) において修了審査の実施方法を規定している。実施基準等においては、採点は100点からの減点式採点法とし、各試験科目終了時に、一等無人航空機操縦士実地試験であれば80点以上、二等無人航空機操縦士実地試験であれば70点以上の者を合格とすると規定している。しかしながら、貴社においては修了審査において適切な採点方法がとられておらず、実施基準等において定められる採点方法では合格基準点に達していない者に対して修了証明書が発行されていた

国空無機第57901号『厳重注意通知書』

登録講習機関において実施する修了審査については「実施基準等」のほか、一等と二等それぞれで公開されている無人航空機操縦士実地試験実施細則 回転翼航空機(マルチローター)に(以下「実地細則」)記載されているとおりの手順で実施する必要があります。
採点方法は実地細則では減点適用基準として示されており、持ち点100点からの減点方式で採点します。
減点累計で合格基準点を下回る場合に不合格となるほか、実技試験において即時試験中止し不合格となる減点細目も存在します。

当然ですが、修了審査に不合格となった受験生に対して修了証明書を発行できません。

二等無⼈航空機操縦士実地試験実施細則 回転翼航空機(マルチローター)

通達改正に伴う事務規程変更の未実施

厳重注意通知書

法第132条の74第2項においては、事務規程に無人航空機講習の実施方法、無人航空機講習に関する料金その他の省令で定める事項を定めておかなければならないこととされており、省令第8条においては、事務規程に記載すべき事項が定められている。さらに、登録講習機関の登録等に関する取扱要領(以下「取扱要領」という。)では事務規程に規定すべき事項の詳細を規定している。本年6月に取扱要領の改正が施行されたところであるが、貴社においては事務規程に記載すべき事項が記載されないまま講習事務が実施されていた。

国空無機第57901号『厳重注意通知書』

令和6年3月8日に取扱要領が改正され、その附則において”令和6年6月8日までは、なお従前の例によることができる。”とされていました。
従前の例によることができる、とは6月8日までは以前の事務規定のままでも良いですよ。とされていました。しかし、6月9日以降は改正された内容に従った事務規定であることが求められます。
ここでは改正の内容は割愛しますが、事務規定の変更届が出されていなかったということです。

登録講習機関の登録等に関する取扱要領

事務規程に規定されていない講習料金の徴収

厳重注意通知書

法第132条の74及び省令第8条に基づき、事務規程に無人航空機講習の料金を定めることが求められているが、貴社においては事務規程に記載されていない割引価格にて料金を徴収していた。

国空無機第57901号『厳重注意通知書』

登録講習機関における講習料金においては、事務規定別添の講習事務手数料に記載し届け出る必要があります。
ここでいう料金とは、受講生からいただく講習料金のほか、受講生に対する割り引きを実施する場合の内容についても記載する必要があります。
監査においては、受講生への請求や入金の記録状況などを総合的に確認します
請求の金額は講習事務手数料と一致するかを確認しますので、一致しない場合はなぜ一致しないのかなどヒアリングを実施します。

講習記録簿における記載事項の未記載

厳重注意通知書

貴社の事務規程において、講習記録簿(学科及び実地)の受講日や時間数等を記載する様式が定められているが、貴社においては学科、実地ともに講習後に時間数が記載されていなかった。

国空無機第57901号『厳重注意通知書』

講習記録簿に記載が必要な内容は、取扱要領に明記されています。(令和6年3月8日改正で明記)
講習記録簿については、国土交通省航空局に届出した様式を使用して記録することが求められます。

講習日(受講日)、時間数のほか、講習科目、講習を行った講師名についても記載することが求められています。
修了審査の採点用紙においても、科目、審査日、審査員名のほか、減点の回数や減点細目を記載することが求められています。

登録講習機関の登録等に関する取扱要領

(6)登録講習機関における無人航空機講習の修了証明書の交付及び再交付に関する事項

(~中略~)
無人航空機講習の記録簿には、講習科目、講習日、講習時間及び講習を行った講師名についても記載をし、修了審査の採点用紙には、修了審査科目、修了審査日、修了審査員名、減点の回数及び各減点の減点細目についても記載すること。

登録講習機関の登録等に関する取扱要領

まとめ

登録講習機関の運営については、講習事務規定が国土交通省航空局に受理されたから大丈夫、というものではありません。
今回の厳重注意の内容にもあったように取扱要領は改正されることもあります。
登録講習機関が届出している講習事務規定は、法令や各種通達に基づくものであり、講習事務規定に則った運営だけではいけませんし、法令や各種通達に遵守しているだけでも適切とは言えません。
法令や各種通達を遵守し、講習事務規定はもちろん登録講習機関として定めている運用マニュアルなどもあればそれらにも従った運営を実施していることが求められます。

登録講習機関等監査実施要領

5-4-2.監査における判定

(3)不適切 次の①から③までのいずれかに該当する事項であって、是正又は是正の検討が必要と考えられる事項が認められたもののうち、上記(2)を除くもの

① 1-3. 準拠基準又は航空局への届出規程に適合していない事項

② 被監査者が独自に設定した規定等に適合していない事項

③ 上記①及び②に該当しないが、被監査者の講習事務に係る体制が適切でない又は潜在的なリスクがあると考えられる場合

登録講習機関等監査実施要領

弊所では登録講習機関等監査実施団体の監査員でもある行政書士が、登録講習機関の登録や届出はもちろん適切な運営のサポートを行っております。
登録更新講習機関のご相談等もお気軽にお問合せください。

PRONEWS様の特集ページに掲載いただきました。

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監修者

行政書士かわさき事務所
ドローン法務を専門とする行政書士
ドローンに関連する事業者様、個人のお客様のサポートをしながら、私自身もドローンの操縦者として練習中です。
二等無人航空機操縦士の資格も取得しました。
ドローンを実際に操縦するからこそ、ドローンの楽しさ、危険性、将来性など、身近に感じることができます。
ドローンに関する幅広い提案ができると考えております。

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