【小型無人機等飛行禁止法改正】重要施設周辺の飛行禁止エリアが1kmに拡大・直罰化へ|飛行許可申請への影響を行政書士が解説

この記事のポイント
  • 2026年3月24日、小型無人機等飛行禁止法の改正案が閣議決定。重要施設周辺の飛行禁止エリア(イエローゾーン)が約300mから約1kmに拡大される見込み
  • 改正後はイエローゾーンでの飛行に対する罰則が強化(6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)。警察官の命令がなくても飛行した時点で罰則の対象となる
  • 航空法の飛行許可承認とは別制度。包括申請を持っていてもイエローゾーンでの飛行には小型無人機等飛行禁止法の手続きが別途必要
  • 2026年6月時点では未施行(国会審議中)。ただし公布から20日で施行される見込みのため、成立後は速やかな対応が必要

2026年3月24日、政府は小型無人機等飛行禁止法(ドローン規制法)の改正案を閣議決定しました。重要施設周辺の飛行禁止エリアが大幅に拡大され、違反時の罰則も強化される内容です。

この記事では、航空法の飛行許可承認申請との関係実務上どう対応すればよいかという点まで踏み込んで、行政書士の視点から解説します。

本記事の執筆時点(2026年6月)では改正案は国会審議中であり、未施行です。今後の審議状況によっては内容が変わる可能性があります。施行が確認され次第、本記事を更新します。
目次

改正の概要

項目内容
閣議決定日2026年3月24日
対象法律小型無人機等飛行禁止法(重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律)
主な改正ポイント①イエローゾーンの拡大(約300m→約1km) ②イエローゾーンでの飛行に対する罰則の強化 ③対象施設の追加
施行時期公布の日から20日を経過した日(国会成立・公布が前提。2026年6月時点未施行)
対象機体100g未満を含むすべての小型無人機(改正前から変わらず)

規制強化の背景:国内で相次いだ重要施設へのドローン侵入事案

今回の改正は突然決まったものではありません。2015年以降、日本国内で重要施設へのドローン侵入・撮影事案が相次いで発生しており、ドローンの高性能化とともにその脅威が高まっていることが背景にあります。

首相官邸ドローン落下事件(2015年4月)

2015年4月、首相官邸の屋上に男が小型無人機を落下させた事案が発生しました。この事案を受けて、翌2016年3月に小型無人機等飛行禁止法が制定・施行されました(警察庁白書 平成28年版)。

この事件を受けて制定された小型無人機等飛行禁止法では、当初イエローゾーンを「おおむね300メートル」としました。警察庁の検討会資料によれば、その根拠は「法制定当時市販されていた主なドローンの映像伝送距離は、市街地の場合、200〜300m程度であり、レッドゾーンに向けて飛行させる操縦者はレッドゾーン境界から300mの範囲内に所在している可能性が高い」ためとされています。

横須賀基地ドローン侵入撮影事件(2024年4月)

2024年4月、SNS上に海上自衛隊の護衛艦「いずも」および米海軍の空母「ロナルド・レーガン」が空撮されたとみられる映像・画像が投稿されました。防衛省は同年5月、「映像は実際に撮影された可能性が高い」とする最終分析結果を公表し、「防衛上、重大な支障を生じかねないことから極めて深刻に受け止めている」と声明を出しました。

この事案は、現行の規制下においてもドローンによる重要施設への不法侵入・撮影が実際に行われていることを示すものとして、改正議論に影響を与えました。

米軍施設周辺での航空機への接近事案

米軍施設の上空・周辺でドローンが飛行し、米軍ヘリが衝突を避けるための回避を余儀なくされた事案も発生しています。防衛省・警察庁・国土交通省・外務省は合同で注意喚起のビラ・ポスターを配布するなど、ドローンによる安全阻害事案への対応が省庁横断的な課題となっています。

警察庁の検討会資料(第1回 違法なドローン飛行対策に関する検討会)によれば、現在市販されている主なドローンの飛行速度は70〜80km/h程度まで向上しており、海外製ドローンの一部機種では約150km/hの飛行が可能とされています。また携帯電話網を利用して操縦するドローンであれば、当該携帯電話網エリア内全域における飛行が可能となっており、現行の300mというイエローゾーンの前提が大きく崩れていることが1km拡大の根拠となっています。

小型無人機等飛行禁止法とは(航空法との違い)

ドローンの飛行規制には大きく2つの法律があります。普段の飛行許可承認申請で関わる航空法と、今回改正される小型無人機等飛行禁止法です。両者は全く別の法律で、管轄省庁も異なります。

項目航空法小型無人機等飛行禁止法
管轄国土交通省(航空局)警察庁
対象機体100g以上の無人航空機100g未満を含むすべての小型無人機
規制の目的飛行の安全確保・事故防止重要施設の安全確保・テロ対策
許可・手続き先国土交通大臣(DIPS2.0)警察署(対象施設を管轄する警察署等)
禁止エリアの例DID地区、空港周辺、150m以上の空域など国会議事堂・首相官邸・防衛施設・原子力施設等の周辺
航空法の飛行許可承認を取得していても、小型無人機等飛行禁止法のイエローゾーンでは飛行できません。2つの法律は独立して適用されるため、両方の規制をクリアしていなければ飛行できないという点が重要です。

改正ポイント①:飛行禁止エリア(イエローゾーン)が1kmに拡大

現行法では、国会議事堂・首相官邸・防衛施設・原子力施設等の重要施設の敷地(レッドゾーン)を中心に、周囲約300mがイエローゾーンとして飛行禁止となっています。改正案ではこれが約1,000m(1km)に拡大されます。

なぜ1kmなのか

警察庁の「技術の進展に伴う危険なドローン飛行への対策に関する報告書」では、拡大の背景として以下の2点が挙げられています。

  • ドローンの映像伝送距離の向上:法制定当時(2016年)は市街地で200〜300m程度だったが、現在ははるか遠方からでもレッドゾーン上空を操縦できるようになった
  • 飛行速度の向上:時速150kmで飛行するドローンは24秒で1,000mを移動する。ジャミングガン等の対処資機材を使うための時間的猶予を確保するためには1kmの距離が必要
300mという数字は2016年の法制定時に市販されていたドローンの性能を前提にしたものでした。ドローンの性能が想定を大きく上回って向上したため、規制範囲の見直しが必要になったということです。

対象となる主な重要施設

規制対象の施設は法律で定められており、主に以下が含まれます(改正により追加される施設もある見込みです)。

施設区分具体例
国政の中枢国会議事堂、首相官邸、最高裁判所、政党事務所、危機管理に関わる政府機関
外交関連外国の大使館・領事館
皇室関連皇居、御所
防衛・警備自衛隊施設、在日米軍施設
エネルギー原子力発電所等の原子力関連施設
交通インフラ空港
上記の施設が全国各地に点在しています。都市部だけでなく地方の防衛施設・原子力施設の周辺でも1kmの禁止エリアが設定されることになります。これまで問題なく飛行していた場所が、施行後は禁止エリアに該当する可能性があります。

改正ポイント②:イエローゾーンでの飛行に対する罰則の強化

今回の改正でもう一つ重要な点が、イエローゾーンでの飛行に対する罰則の強化です。

項目改正前改正後
イエローゾーンでの飛行直ちに罰則の対象とはならない。警察官による退去命令等に違反した場合に罰則警察官の命令がなくても飛行した時点で罰則の対象
罰則命令違反:1年以下の懲役または50万円以下の罰金イエローゾーン飛行:6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
改正後は警察官の命令がなくても飛行した時点で罰則の対象となります。「警察官に止められなければ問題ない」という状況ではなくなるため、知らずにイエローゾーンに進入した場合でも罰則が科される可能性があります。飛行前に必ず禁止エリアの確認を行うことが不可欠です。

航空法の飛行許可承認申請への影響

航空法の飛行許可承認申請との関係は、実務上特に注意が必要な点です。

小型無人機等飛行禁止法と航空法は別々に確認が必要

航空法の飛行許可承認申請(包括申請・個別申請)を取得していても、小型無人機等飛行禁止法の規制とは完全に独立しています。改正後の1kmエリア内での飛行を検討している場合は、航空法の申請とは別に、小型無人機等飛行禁止法に基づく手続きが必要です。

状況対応
改正後の1kmエリア外での飛行小型無人機等飛行禁止法の影響なし。ただし航空法をはじめ他の関係法令の確認は引き続き必要
改正後の1kmエリア内(旧300m圏外)での飛行新たに飛行禁止の対象となる。小型無人機等飛行禁止法に基づく手続きが必要
改正後の1kmエリア内(旧300m圏内)での飛行改正前から禁止。改正後も引き続き手続きが必要(警察官の命令がなくても罰則の対象となる点が変わる)

DIPSの飛行計画通報への影響

航空法の飛行計画通報(DIPS2.0)は変更不要です。小型無人機等飛行禁止法の改正はDIPSの申請内容や手続きには影響しません。ただし、飛行場所の事前確認の重要性が高まることは変わりません。

包括申請の有効期間が残っていても、飛行場所の確認は毎回必要です。特に施行後は1km圏内に新たに含まれる地域が出てきますので、これまで問題なかった飛行ルートについても改めて確認することをおすすめします。

施行前後に行うべき実務上の対応

施行前(現時点)にできること

  • 定期的に利用している飛行エリアを確認する:国土地理院の地図や国土交通省の「ドローン情報基盤システム(DIPS2.0)」の飛行禁止エリア確認機能を活用し、対象施設から1km以内に含まれる場所がないかチェックする
  • 業務で使用している飛行ルートを洗い出す:インフラ点検・空撮・測量等で定期的に飛行しているルートが1km圏に含まれないかを確認しておく
  • 法案の国会審議をウォッチする:成立・公布から20日という短期間で施行される見込みのため、成立情報を速やかに把握できるよう準備しておく

施行後に必要となる手続き

改正後の1kmエリア内で飛行する業務上の必要がある場合は、小型無人機等飛行禁止法に基づく手続きを警察署に対して行います。手続きの詳細については、施行後に警察庁から案内が出る見込みです。

小型無人機等飛行禁止法の手続きは現状、警察署への書類提出が主な方法です。航空法のDIPSのようなオンライン一元化システムはなく、窓口・管轄ごとに対応が異なる場合があります。詳細が明らかになり次第、本記事を更新します。

よくある質問

小型無人機等飛行禁止法の改正はいつから施行されますか?
2026年3月24日に改正案が閣議決定されました。法案要綱では一部を除き公布の日から20日を経過した日から施行するとされていますが、国会での成立・公布が前提です。2026年6月時点では未施行であり、施行日は今後の国会審議次第となります。
航空法の飛行許可を取得していれば、改正後のイエローゾーンでも飛行できますか?
いいえ、できません。小型無人機等飛行禁止法と航空法は別の法律です。航空法の飛行許可承認を取得していても、小型無人機等飛行禁止法のイエローゾーンで飛行するには、同法に基づく警察への手続きが別途必要です。改正後は1kmに拡大されたエリアでの飛行にも同様の手続きが必要となる見込みです。
100g未満のドローンも飛行禁止法の規制対象になりますか?
はい、対象になります。小型無人機等飛行禁止法は航空法とは異なり、100g未満の機体も規制の対象です。これは改正前から変わりません。
改正後のイエローゾーンでの飛行は、従来と罰則の扱いが変わりますか?
はい、変わります。従来はイエローゾーンで飛行しても、警察官による退去命令等に違反した場合に初めて罰則が科される仕組みでした。改正後は、命令がなくても飛行した時点で罰則の対象となります(6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)。知らずに飛行した場合でも罰則が科される可能性があるため、飛行前の事前確認が不可欠です。
包括申請を取得している場合、1km拡大後も同じ申請内容で飛行できますか?
航空法の包括申請は小型無人機等飛行禁止法とは別制度のため、包括申請の有無にかかわらず、改正後のイエローゾーン(1km圏内)で飛行するには小型無人機等飛行禁止法に基づく手続きが必要です。包括申請の内容自体を変更する必要はありませんが、飛行場所の確認は改めて行う必要があります。
飛行許可承認申請・飛行禁止エリアの確認はお任せください
小型無人機等飛行禁止法・航空法の両方の観点から、飛行の適法性確認や申請代行をサポートします
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